SHEENA EASTON / Kisses

Do You

Do You

そもそもシーナ・イーストンってちっとも良いと思っていませんでした。ちゃんとアルバムで持っているのはこの曲の入った「DO YOU」だけ。嫌いな理由は何と言ってもあの声。リアルタイムではこのアルバムの前の「プライベート・ヘヴン」(大ヒット作)で彼女を知ったわけですが、このアルバムkからカットされた「ストラット」「シュガーウォールズ」もあのキンキンした声が嫌いで、その前のヒット曲「モーニング・トレイン」や「ユア・アイズ・オンリー」にしても、「あぁ、パット・べネターだったらもっといい曲になってただろうに」と思ってました。要は感情表現が下手だなと思っていたわけです。

ところが、「DO YOU」からの1stシングルになった「愛にDO IT」(これもひどい邦題だ)は彼女のキンキン声もあまり目立たず、何よりその曲の良さに感心しました。これはプロデューサーのナイル・ロジャースの音づくりも多いに影響している点だと思いますが、シンプルだけど印象的なリズムカッティングに良質のメロディーが乗っているところに彼女のヴォーカル・スタイルが変わった理由があるのかもしれません。今回取り上げた「炎の口づけ」はアルバム中でも最も地味な曲ですが、レゲエっぽいリズムに染みるメロディが乗った佳曲で、サビがシーナの抑えた高音というこれまた珍しいパターン。このあたりにも当時マドンナなどを手がけ、敵なしだったナイル・ロジャースのプロデュース能力が発揮されています。

さてその後のシーナは、しぶとく生き残っています。デビュー当時よりも間違いなく角がとれてきれいになった感じがしますが、肝心の音楽は…元に戻ってしまいました。しかもプリンスとの共演「ユー・ガット・ザ・ルック」がヒットしてしまったのも今となっては悪い成功体験だったのか。「DO YOU」の路線を続けていけばおもしろい展開もあったのになぁと思うと残念です(とはいえ、このアルバム、アメリカでは大コケでした)。