ROGER DALTREY / Break Down Paradise

Under a Raging Moon

Under a Raging Moon

ご存知、ザ・フーのヴォーカリストのソロ作。この方は時代によって声質がかなり異なりますが、好き嫌いは分かれるでしょう。

それはさておきこのアルバム、85年に出たアルバムの中でも屈指の個人的最高作の1枚でした。ジャケ良し、曲良し、アレンジ良し。盟友ピート・タウンゼンドによる「アフター・ザ・ファイア」(当時CMでも使用された)はもちろん、ブライアン・アダムスによる「レット・ミー・ダウン・イージー」「レベル」(この曲は自身のアルバム「イントゥ・ザ・ファイア」でセルフカバー)など、それ以外の曲も非常に高いクォリティを持っています。

中でも好きだったのが今回取り上げた「ブレイク・ダウン・パラダイス」で、この曲は元アージェントのラス・バラードによるもの。ラスといえばレインボーの「シンス・ユー・ビーン・ゴーン」「アイ・サレンダー」、アメリカの「風のマジック」など、ソングライターとしてピカイチの日本人好みなメロを書く人で、この「ブレイク〜」も同様路線。サビにまでもっていくAメロからして盛り上げ方が上手く、そしてサビで「これでもか」というほどキャッチーな曲を書かせれば、ボン・ジョヴィなどでも知られるデスモンド・チャイルドと並んで代表的なお方。ロジャーもしっかりこの曲にマッチし、ドラマティックな展開を見せます。

というよりですね、このアルバムほんとにいいです。先日久々に聴きましたが、本当に飽きない。ザ・フーにはそんなに染まっていないのに、ロジャーのほかの作品にはほとんど思い入れがないのに、これだけは別格。横綱アルバムですよ。

JELLYFISH / Baby's Coming Back

Bellybutton

Bellybutton

10cc、クィーンの流れを汲む正統派パワーポッパー、しかもアメリカのバンドであるジェリーフィッシュを知ったのは随分後のこと。そのときには既に解散しており、残念だなーと思わせた数少ない90年代のバンド。


一般にはセカンド「こぼれたミルクに泣かないで」の方が名盤扱いされており、なるほど、アルバム自体の完成度は確かにそっちが上。しかしヒネた私としては、こっちの1stも実に捨てがたいのです。


何しろ曲がいい。10ccやクィーンというよりも、もしジョン・レノンが生きていたらこんな感じの曲を作ってたかも知れないと思わせる「ビートルズ先祖返り」タイプ。個性がないというのではなく、雑誌「ストレンジ・デイズ」でいうところの「ビートルズの遺伝子」ですな。


最近の音楽と言えば、ポスト・パンクだかエモだか(さっぱりわからん)エクスペリメンタルだかしかないような感じですが、こういうわかりやすいポップさをもった職人芸のアルバムがもっと出て欲しいですね。


あ、今回紹介の「ベイビーズ・カミング・バック」、文句なしの軽いポップです。

PRINCE / Do Me,Baby

CONTROVERSY

CONTROVERSY

意外なことなんですが、プリンスを取り上げるのは初めて。このジャケ、かっこいいでしょう? 81年作の「戦慄の貴公子」より、「ドゥ・ミー・ベイビー」。

プリンス・ファンにとっては初期の名バラードであるこの曲を最初に聴いたのは、実はメリサ・モーガンによるカバー。地味な曲だなとしか当時は思わなかったんですが、本家を聴いてこの曲の良さを痛感。

プリンスの場合、他人に提供した曲やカバーも含め、完全に自演の方が勝っている特徴を持っています。作者だから当たり前といえばそうなのかもしれませんが、一般に複数のアーティストなりのヴァージョンがある場合、大抵は最初に聴いて馴染んだ方が好きだったりする(たとえば私の場合、シカゴの「長い夜」は絶対にアルバム「18」のリメイク版の方が好きなのはそういう理屈)もんですが。シンニード・オコナーが大ヒットさせた「ナッシング・コンペアズ・トゥ・ユー」もプリンス版の方がシンプルなのに情感があって好き。

そう、プリンスの魅力は、シンプル(でも実は凝っている)に聴かせるのに情感がたたえられている(というよりドロドロ)ところにあると感じています。それが非常にわかりやすいのが「ドゥ・ミー・ベイビー」であり、「リトル・レッド・コルヴェット」「ポップ・ライフ」「イフ・アイ・ウォズ・ユア・ガールフレンド」などの私のお気に入りの曲だったりします。

というわけで、プリンス=粘着と感じる方は、純粋にバックだけきっちり聴いてみてください。


ところでプリンスは58年生まれ(昭和じゃないぞ)なので、今年で47歳。この曲を作ったのが23歳。早熟だなぁ。

MADNESS / Lovestruck

Wonderful

Wonderful

マッドネスは80年代前半にヒットを連発、一度解散してから80年代末に再結成し、その後は地道な活動を続けるバンド。

当初は2トーン系の代表格で、日本じゃ例の「シティ」のムカデダンスでしか語られないのはひどい話じゃないですか。

そんな彼らが見事な作品を発表したのが99年。「ラブストラック」はアルバム「ワンダフル」のオープニングナンバーで、確かシングルカットもされたはずですが、これがもう名曲。

イギリス直系の超ポップナンバーで、アレンジも完璧。彼ら特有のクールなピアノがリズムを刻み、まるでビートルズコステロかといった感じの、暖かくも硬質なアレンジ。
それにしても80年代のこの手のアーティストの再発は進みませんね。


…と思ったらやっぱり東芝EMIじゃねーか、権利持ってるのは。
やはり東芝は私にとって敵なのかも。


追伸:今アマゾンでこのアルバムを調べたら、なぜか4000円超えてました。ボートラもないし2枚組みでもないのに。どうやら既に廃盤で価値が上がっているようです。

KAJA / Your Appetite

Crazy Peoples Right to Speak

Crazy Peoples Right to Speak

デュランといえばカジャグーグーの存在はやはり忘れられません。もっとも「二番煎じ」の感は相当強かったでしょうが、その裏にニック・ローズがいたわけですから当然といえば当然。ニックがかかわっただけあって、1stはシンセ中心の音作りが目立ち、加えてリマールの甘い声ですから、どうしても軟弱なイメージがあり、シングル「君はTOO SHY」も含めて私はあまり好きではありませんでした。

ところがです。あっさりと人気者リマールをクビにし(てっきりリマールが色気を出してソロに転身したかと思ったら実はそういうことだったらしい)、セカンドはフュージョン&ファンクに移行し、その結果大方のファンは去り、逆に一部は「けっこう演奏上手かったんだ」と驚いた結果になりました。いやいやまったく、こいつらは「けっこう」どころか、メチャクチャ演奏が上手かった。特に後にチャップマン・スティックの奏者として有名になるニック・ベッグスのベースは、個人的にはレベル42のマーク・キングに次ぐ上手さだと思ったものです。

その後、バンド名をカジャに変更、そしてサード・アルバムを出すわけですが、イギリスのみならず日本でもほとんど売れませんでした。セカンドではまだ「ビッグ・アップル」「ライオンズ・マウス」といったヒット曲があったのですが、サードからのシングル「涙の傷あと」は下位で終わり、セカンドで見直したファンにとってはこのサードは幻のアルバムとなってしまいました。

しかしこのサード、80年代のニュー・ロマンティック以降の作品の中でも屈指の傑作。詳しくは「ダメ盤検証」のページを参照していただくとして、アレンジもよく練られていますし、曲のよさもセカンドを遥かに凌駕する出来。今回紹介する「アペタイト」は曲展開も飽きさせない佳作。この曲以外にもいい曲は多いので、再発されたらぜひ聴いてみてください。

ただ難を一つだけ。リマールにせよ、後を継いだニックにせよ、ヴォーカルの声質にはどうも肌が合いません。どっちかといえば気持ち悪い(ファンの方すまん)。どっちもある意味中性的ですが、ボーイ・ジョージのような上手さやピート・バーンズのようなエキセントリックさもなく今ひとつとしかいいようがない。ルックスも・・・なんとなく無理してる感じが昔からしていましたが。

DURAN DURAN / Anyone Out There

Duran Duran

Duran Duran

中学生の頃、デュランはまさにアイドルでした。私はなんといってもヴォーカルのサイモンのファンで、あの途中でちょっと裏返る声に男の私ですらセクシーさを感じたものです。

リフレックス」「ニュー・ムーン・オン・マンディ」「ザ・ワイルド・ボーイズ」にはまった私は(つまりアルバム「アリーナ」あたりが本当のリアルタイム)、それから「リオ」、そしてこのデビュー・アルバムを手に入れました。私にとっての1stはそりゃもう「プリーズ・テル・ミー・ナウ」だったわけですが(再発盤にのみ収録)、スカスカの音作りとひ弱なヴォーカル(それを考えるとやはりセカンド「リオ」はえらいこと進歩したのだなぁ)に不満があったものの、その他の曲も軒並み好きでした。つまりメロディーが単純に良かったのです。意外なことにメロディー・メイカーとしてデュランが評価されることは今も昔もほとんどありませんが(評価されるのは「セイヴ・ア・プレイヤー」ぐらいか)、1stは特に演奏とアレンジが稚拙な分だけ余計にメロディが際立っているようにも感じます。で、おすすめはコレ。原題は”Anyone Out There”でまんまですが、よくできた曲です。

ところでアナログ盤の1st初回盤は「プリーズ〜」が入っておらず、写真もデビュー当時のものが使われており(写真参照)、今となっては結構お宝盤らしいです。現行CDは初回盤のデザインで曲目も同じになっていますがCCCDです。以前のCDを持っている方は買わないように。

JEFF LYNN / Video

Electric Dreams - Soundtrack

Electric Dreams - Soundtrack

当時快進撃を続けていたヴァージン・レコードから出たスーパー・サントラがこの映画「エレクトリック・ドリームス」。参加アーティストはカルチャー・クラブにヒューマン・リーグのフィリップ・オーキー、ジョルジオ・モロダー、ヘヴン17、P.P.アーノルドなど。その中でも2曲を提供していたのがカルチャー・クラブとELOのジェフ・リン。カルチャー・クラブはともかく、ELOは当時活動中止状態であったこともあって、まったく知らないで聞いてましたが、とにかくポップな2曲に魅力を感じていました。

後からみると、シンセギンギンのサウンドはELO的ではないのですが、このサウンドが86年のELO復帰作「バランス・オブ・パワー」に活かされたという点でも注目すべき曲となりました。もっともメロディは従来のELO的なものだから親しみやすいものです。どっちかといえばカルチャー・クラブやヘヴン17がいかにもアウトテイク的な作品だったのに比べると、ここでのジェフは本気も本気。結果的に彼の初ソロ作品としてシングルカットもされました。輸入盤でまだこの作品は手に入りますので、興味のある方はぜひ。アウトテイク的とはいえ、カルチャー・クラブの中でも名曲とされる「ラヴ・イズ・ラヴ」や「ザ・ドリーム」、さらにバックコーラスで参加しおていたヘレン・テリーのソロ曲も収録されています。