N.M.L. / Zero Landmine
- アーティスト: N.M.L.,David Sylvian,坂本龍一
- 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
- 発売日: 2001/04/25
- メディア: CD
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全部で6トラック入っているのですが、なんといってもおもしろいのはトラック1。いかにもクラフトワークらしいサウンド・ロゴに始まり、イヌイットの子供による歌→朝鮮半島→カンボジア→インド→チベット→ボスニア→アンゴラ→モザンビークと、その地の音楽をサンプリングして曲が続きます。カンボジアやインド、モザンビークは実に印象的なサウンドで、興味深いものでした。くわえてチベットのパートでのダライ・ラマの演説も実に素晴らしいものでした。この間のバックを埋めるサウンドもさすがともいうべきもので、特に印象的なのは細野晴臣のベースライン、DJ KRUSHによる素晴らしいターンテーブルさばき、アート・リンゼイの美しいギターは特筆すべきものです。
それにくらべると後半の歌のパートは豪華なゲストの個性が表れているとは言い難く、メロディラインにマッチしているのは作詞を担当したデヴィッド・シルヴィアンと、大健闘のGLAYのTERUくらいだったように思います。とはいえ、素晴らしいのは何といってもこの歌詞です。前述のようにデヴィッド・シルヴィアンが「子供にも歌える歌」という坂本龍一の依頼に合わせて作ったそうですが、実にシンプルで美しい歌詞になっています。かつてのバンドエイドやUSAフォー・アフリカによるチャリティー・シングルの歌詞に、日本人としてはどうも違和感を感じてきたために(宗教観や個人主義的な感性が合わなかった)、今回のこのシングルもどうしようかなと思ってましたが、買って歌詞を読んでみて久々に素直に感動できる歌詞に出会いました。デヴィッドといえばジャパンの1stの頃から今日に至るまで、かなり難解な詩を書いてきた人だけに、ここでの仕事はさすがと思わされました。そして彼のヴォーカルもさすがの一言。この人ほど年々うまくなっている人も珍しい。坂本龍一とのコラボレーションといえば「盤ブー・ハウス」や「禁じられた色彩」が挙げられますが、この曲も最初から最後まで彼が歌っていたらもっと良かったかもしれないなと思いました。
私個人としては、チャリティや政治的問題に音楽を使うことに対して、まだ是非をつけかねています。それは先の歌詞の問題もありましたし、古くはジョン・レノンやU2、ポール・ハードキャッスルなどの歴史を見てきても、彼らの与えてきた影響と弊害のバランスをどう考えれば良いのかがよくわからないのです。本来「音」を「楽」しむことが音楽の意味であるのに、こういう音楽の利用というのはその本質を誤らせることにならないのかとも思うのです。この「ZERO LANDMINE」はそういう意味ではまたいろいろとお考えさせられるものでした。まだ判断がつきかねますが、ひょっとしたら他の国の苦しむ人々を「楽」にする「音」というのも「音楽」の意味としてはありなのかな、とも思いました。
何はともあれ、この曲は単純に「音」としても十分に楽しめる内容だと思います。