PHIL COLLINS / Inside Out

No Jacket Required

No Jacket Required

前回はジェネシスの隠れ名曲を紹介しましたが、意外にもまだフィルの曲は紹介していなかったので、大ヒット・アルバム「ノー・ジャケット・リクワイアド」から紹介。

「夜の囁き」「恋はあせらず」と既にジェネシス以上の成功は収めていたフィルですが、彼が完全にブレイクしたのは映画「カリブの熱い夜」からの主題歌「見つめて欲しい」(当時ポリスの「見つめていたい」とタイトルがよく混同されたものです)が大ヒットしてから。そして85年に入ると「ススーディオ」「ワン・モア・ナイト」「テイク・ミー・ホーム」「ドント・ルーズ・マイ・ナンバー」が次々とヒット。その合間にEW&Fフィリップ・ベイリーと組んで「イージー・ラヴァー」が大ヒット、さらに新人マリリン・マーティン(今は何をしてるのやら)と映画「ホワイト・ナイツ」(だっけ?)の主題歌「セパレート・ライヴズ」(これは大した曲じゃなかった)もあっさり大ヒット。前年はバンド・エイドでドラムを叩き、この年はライヴ・エイドで唯一イギリス・アメリカの両ステージで演奏と、とにかく破竹の勢いでした。当時ユーリズミックスデイヴ・スチュワートと並んで「ワーカホリック(仕事中毒)」と呼ばれたほどです。

そういうわけで、彼の本当の出世作であったサード・アルバム「ノー・ジャケット・リクワイアド」、前述のシングルの印象が強すぎるのですが、実はいまだにパワーポップの名作といえます。とにかく捨て曲なし。フィルのソロの場合、ドラム音が大きく、独特のエコー感(ただのゲート・エコーとはちと違う)があるのも特色で、このあたりはスティーヴ・リリーホワイトの弟子であり、ポリスを手掛けたヒュー・パジャム(彼はフィルの1st・2ndもエンジニアとして参加)の手腕でしょう。そしてメロディの良さとドラム・サウンドが効果的なのが今回紹介する「インサイド・アウト」。イントロからドッカーンという感じで、当時ノリノリだったフィルの面目躍如たる傑作。というか、このアルバムを表す典型的な一曲。当時から好きだった隠れ名曲です。