T-REX / Rip Off

Electric Warrior

Electric Warrior

ずいぶん昔から知っていたのに、きちんと聴いたのは実はつい最近。間接的な初体験はご想像通りパワー・ステーションによる「ゲット・イット・オン」のカバー。というわけで代表作の「電気の武者」を買って聴いたわけですが、良い意味で予想を裏切られたサウンドでした。

Tレックスはご存知の通り一般にはデヴィッド・ボウイロキシー・ミュージックのようにグラム・ロックの代表的な存在とされており、私もそういうサウンドを想像していたのですが、誰とも違う独自性を感じました。もっとも孤高の存在であったからこそ今でも支持されているわけなのですが。

バックの音のシンプルさと名匠トニー・ヴィスコンティによるストリングスのアレンジ・音空間作りがその個性を支えていると思われますが、なかなか言葉で表現できないという点でも唯一無比の個性です。

このアルバムには「ゲット・イット・オン」「ジープスター」という大ヒット曲が収録されていますが、ほかにも「マンボ・サン」「コズミック・ダンサー」、そして今回紹介する展開がハチャメチャなラスト・ナンバー「リップ・オフ」といった印象的な曲が多く収録されています。とりわけこの「リップ・オフ」、妙にテンションの高いボランのヴォーカルとヴィスコンティの才気走ったアレンジが最も力強い形で絡まった曲。ある意味グラム・ロックの典型のような粘着感のある曲でありながら、テンションの高さとアレンジのおもしろさがそのあたりのジャンルをつきぬけるようなイメージを感じさせます。

既に数曲タイトルを羅列したように、曲のタイトルも非常にセンスを感じさせるアーティストでもあります。シングル・アーティストのイメージが強いボランですが、アルバム・アーティストとしてももっと評価されていいと思います。