ULTRAVOX / We Came To Dance

Quartet

Quartet

80年代初頭のニュー・ロマンティック・ブームは非常に印象的なものだったのですが、音楽的には無視されており評価の低いムーヴメントになってしまっています。しかしこのムーヴメントこそ後の第二次ブリティッシュ・インベイジョンの礎を作った重要なものだったと思います。中でもこのウルトラヴォックスはもっと評価されるべきグループだと思います。

よく知られるようにウルトラヴォックスはジョン・フォックスがリーダーシップを取っていた時期と、ミッジ・ユーロによる再編後の大まかに2つの時期に分けることができます。ジョン・フォックス時代はその後のシーンに与えた影響も大きく、「早過ぎたバンド」としての評価が高いのですが、ヒットには恵まれませんでした。それに対しミッジ・ユーロによる再編後は81年の「ヴィエナ」の大ヒット以来、イギリスのみならず日本でも「ニュー・ヨーロピアンズ」がCMソングに使われたこともあって非常に人気が高いのですが、逆に音楽的な評価はあまりに過小だと思うのです。ミッジの作るメロディーに香る叙情性とトラッド風味が、クールなシンセと鋭角的なギター・カッティングによってアレンジされるその音楽性は、非常に個性的であるにも拘わらずです。

そういう彼らの音楽性が最もよい形で表れているのは前述の「ニュー・ヨーロピアンズ」や81年の「幻想の壁」、そして今回の「ウィ・ケイム・トゥ・ダンス」です。中でも「ウィ・ケイム・トゥ・ダンス」は「クール」を音にするとこうなる、とでもいうべき傑作だと思います。彼らのアルバムはまずはずれがないので、ぜひすべて聴いてもらいたいなと思います。