ROLLING STONES / Mother's Little Helper

Through the Past Darkly

Through the Past Darkly

60年代中期のイギリスは革新性の点でやはりビートルズストーンズが双璧であったように思います。中でも66年はビートルズが「リボルバー」で、ストーンズは「アフターマス」でと間違いなく現在のUKシーンにも大きな影響を与えるアルバムを生み出します。ストーンズのパブリック・イメージはロック一筋のようになっていますが、この頃のストーンズはロックといっても一筋縄ではいかない興味深い曲を多く残しています。シングルだけでも「19回目の神経衰弱」「黒くぬれ」「マザー・イン・ザ・シャドウ」「夜をぶっとばせ」「ルビー・チューズデイ」とタイプの違う楽曲をチャート・インさせています。シングル・アーティストしての彼らはこの頃を頂点として69年まで続きますが、「転がる石」そのまま、その音楽性は多様性と変遷の連続を続けつつもやがてダウン・トゥ・アースなロックに収斂されていきます。長い活動歴の彼らの歴史の中でもこの頃に愛着を感じるファンも多いと思います。

今回紹介するのはその66年にアメリカのみでシングル化された「マザーズ・リトル・ヘルパー」。まるで「ローハイド」のようなカントリー・フレイバー溢れる名曲です。この曲や「黒くぬれ」のように当時のストーンズサウンドを特徴づけていたのはキースでもミックでもなく、いわんやチャーリーなわけもなく、ブライアン・ジョーンズその人でした。この曲では彼の12弦ギターの印象的な音色が個性とかっこよさを演出しています。

どちらかといえばストーンズ・レコードを立上げ、アルバム「スティッキー・フィンガーズ」、シングル「ブラウン・シュガー」以降が多数派のファンに注目されがちではありますが、60年代のデッカ・レコード時代の彼らも忘れちゃいけません。ジャケットは彼らの2枚目のベスト盤ですが、この時代の彼らの新しさとかっこよさを味わうには好盤です。