10cc / Marriage Bureau Rendezvous

Deceptive Bends

Deceptive Bends


最近某CMで印象的に使われていた「愛ゆえに」など、どちらかといえばシングルのイメージが強い10ccですが、シングル以外にもいい曲がたくさんあります。何しろ後にポール・マッカートニーと組んだエリック・スチュワート、ホリーズの「バス・ストップ」にヤードバーズの「フォー・ユア・ラヴ」といった60年代の名曲を作ってきたグラハム・グールドマンがいたバンド。とかくゴドレー&クレームのクリエイティヴィティばかりが注目されるのは納得がいきません。私はあくまでエリック&グラハムを支持します。

さて、この「マリッジ〜」はアルバム「愛ゆえに」からの曲。彼らが愛される理由はその卓越したメロディとともにいかにも英国人らしいユーモアのある歌詞にもあります。この曲の場合、結婚相談所へ向かう男の何ともユーモラスな描写が楽しいのです。曲調もそれに合わせてか、なんだかチャップリンの喜劇を思わせるような出来。こういう単なるアルバムの一曲というのは決して侮れませんよ。手を抜かないクラフトマンシップ(職人魂)を感じさせる数少ないバンドでもありました。

彼らのベスト盤をまずおすすめしますが、良いメロディは大抵の場合エリック&グラハムです。ただゴドレー&クレームがいた頃は間違いなくサウンドリエーターとしても超一流のバンドでした。余談ですが、「アイム・ノット・イン・ラヴ」の強烈なバックコーラスの壁はたとえばビリー・ジョエル不朽の名作「素顔のままで」のアレンジなど、大きな影響を残しているように思います。同じバラードでも「アイム・ノット・イン・ラヴ」がいつまでもどこか革新的なのに対し、ゴドレー&クレームが抜けてからの傑作「恋人たちのこと」が実にスムーズなエヴァーグリーンであるといった対照も10ccを楽しむ一つの側面であるように思います。