PAUL McCARTNEY & STEVIE WONDER / Ebony And Ivory

motogakusei2004-12-04

おそらくは今年最後の更新にあたり、2000年にふさわしい曲を探しておりました。いくつか候補もあった中、今朝出勤途中で聞こえてきたのがこの曲でした。黒人と白人をピアノの鍵盤にたとえた人類の調和を題材にした内容も、20世紀の締めくくりにあっているのではないでしょうか。

実はこの曲、アルバム「タッグ・オブ・ウォー」の中でもあまり好きでない部類の曲でした。しかし、あらためて思うにこの曲はやはり名曲です。歌詞カードを見ずに最初から最後まで私が歌えるのはこの曲を除くとエルトン・ジョン「僕の歌は君の歌」とギルバート・オサリバンアローン・アゲイン」だけなのですが、普遍的な内容であるとともに実にシンプルでわかりやすい歌詞(というより英語)、明快なメロディーはやはり名曲と呼ばずして何なのか、と言わざるを得ません。

ブートではこの曲のデモ・ヴァージョンを聴くことができますが、そのときはより穏やかで寂しげな曲でした。"We all know that people all the same wherever you go 〜 What we need to survive together alive" の中間部もなかったのですが、完成版はそれに比べるとブラスの音も入っていますし、実にポップで暖かい雰囲気の曲になりました。12インチにはポールのソロ・ヴァージョンも入っていますが、違和感なく聞けるところがこの曲の本質(=ポールらしさ)でしょう。

82年はマイケル・ジャクソンが「スリラー」でブレイクする年でもありますが、ここでもポールはマイケルと「ガール・イズ・マイン」をデュエットし、この曲ともども大ヒットさせています。ブラック系アーティストを白人のセールスに結び付け、黒人だけのものであったR&B、ソウルをポピュラー化した点においても82年におけるポールの役割は歴史上大きく語られるべきことでしょう。彼のおかげで以後のマイケル旋風やライオネル・リッチーホイットニー・ヒューストンマライア・キャリーらがポピュラー・ミュージック・シーンに出やすくなった状況を生みやすくしたのです。

この曲で語られる内容は「人種を超えた人類愛」ですが、私個人はそんなことを声高に主張できるほどの度量を持ち合わせてはいません。世紀末にこの曲をもって私が語れることは、「自分の周りにいる愛すべき人々への賛歌としたい」、といった実に小さなことでしかありませんが、それでいいんだな、と思う2000年の末の自分でした。