BILLY JOEL / All For Leyna

Glass Houses

Glass Houses

ビリーの代表作として「グラス・ハウス」が取り上げられることはまずありません。それは「ピアノ・マン」というパブリック・イメージを最も感じさせないアルバムであることもその一因でしょう。しかし皮肉なことにベスト盤を除けば最もヒットした一枚でもあるのです。というわけで評価が難しいアルバムなのですが、バラードのイメージが強いピアノでも十分にロックができることを示した曲がこのアルバムに収められている「レイナ」です。

イントロのピアノの連打を聴いただけで「名曲だ」と感じさせる圧倒的な説得力があります。中間部の「STOP!」という叫びの後に演奏を完全に止める見事な間も理屈抜きでかっこいい。このあたりの躍動感が後のベン・フォールズに与えた影響というのは大きいような気がします。ビリーも好きなジェリー・リー・ルイスの「火の玉ロック」やビートルズもカバーしたバネット・ストロングの「マネー」などのピアノ・ロック・クラシックをコンテンポラリーな形で昇華したこの曲は80年代の始まりを高らかに伝えた傑作です。

リリカルな作風に本来の魅力があふれるビリーですが、この曲やアルバム「ザ・ブリッジ」のオープニング「ランニング・オン・アイス」、アルバム「ニューヨーク物語」に収録され、ライヴの定番となっている「怒れる若者」など、ピアノ連打による傑作をいくつもモノにしています。洋楽ファンに評価が高く、評論家からはどうも軽視されているイメージのあるビリーですが、ぜひその魅力を先入観なしに味わってほしいものです。