PAUL YOUNG / Man In The Iron Mask

Secret of Association

Secret of Association

当時はそれほど興味もなかった(「ミュージック・ライフ」誌のバカ騒ぎのせい)アーティストですが、改めて聴き直すと、ほんとにポール・ヤングは上手い。カバーの取り上げ方を含めたスタンスが似ているマイケル・ボルトンと比較すると、ずっと声の出し方もナチュラルだし、滑らか。シンプリー・レッドのミック・ハッキネルほどクセもない。ゆえに中庸のきらいもないわけではないですが、「癒し」(大嫌いな表現ですが)の声を持った稀有な人。

彼の作品中一番売れたのは85年のアルバム「シークレット・オブ・アソシエーション」はやはりカバーの多いのが特徴ですが、この人のセンスは面白くて、たとえば今回紹介するこの曲は、ビリー・ブラッグの作品。ビリーの曲の中でもかなり地味なものの一つですが、それをサザン・ソウルの現代版のようにアレンジし直し、絶唱ともいえる唄いっぷりはお見事。ヒットした「エヴリタイム・ユー・ゴー・アウェイ」「プレイハウス・ダウン」などのカバーもそうですが、相当時代と寝たアレンジの割りに古臭さを感じさせないのは、この人の声の力。滑らかでナチュラルだけどアレンジに負けない。改めて再評価しました。ナルシスト一歩手前の実力派シンガーの作品は魅力的です。ホイットニーやボルトンも見習って欲しい。

ところで実は彼の本当の最高傑作は本アルバムのシングルカットもされた「心の道標」。オリジナルなんですね。つまりこの人は優れたソングライターでもあるわけです。ダテにバンドエイドでトップバッターを張ってはいないのです。