AIRPLAY / Cryin' All Night

ロマンティック

ロマンティック

デヴィッド・フォスターとジェイ・グレイドンというAORの重鎮二人が組んだスーパーユニットがこのエアプレイ。Way Keyさんに教えていただいて聴いてみたのが1年前ですが、その完成度の高さに「ううむ」と唸ってしまった名盤です。でも売れなかったというのも何となくわかるような。

簡単に言ってしまうと、80年代の音処理(FM的)を決めてしまった作品です。だから一般の音楽ファンよりも当時のミュージシャンに大きな影響を与えたというのは納得ですが、おもしろいことに他の凡百のアーティストたちがエアプレイと似たアプローチで作品を作ろうとすればするほど陳腐でスカスカな音に聞こえる(これが80年代の音楽を嫌いな人の理由だと思う)のです。それは理由も簡単で、音の作りこみが甘い(だから他はスカスカになる)ことと、コーラスなどのヴォーカリゼーションを大事にせず、バックの音に気を配りすぎていること、そして何よりも曲がつまんないことが理由です。たとえばこの「クライン・オール・ナイト」だとか「貴方には何もできない」といった曲を聴けばそのあたりは一目瞭然でして、「産業ロック」だの「売れ線」だのという批判とは次元が違うくらい曲自体のレベルが高い上に演奏力がすごいのです。

そういう意味ではシンセとギターとコーラスを組み合わせて中〜高音域を強調したFMサウンド的な音作りをすれば完成度の高い音楽が作れるという勘違いをさせてしまった点で、実は功罪の大きいアルバムです。しかし今日のデヴィッド・フォスターへのバッシングがほとんど無意味なのはもうおわかりのことと思います。ところでこの「クライン・オール・ナイト」、ヴォーカルが入ってからは完璧なんですが、このセンスの悪いイントロだけは何とかならなかったのでしょうか。惜しいなぁ。