GEORGE HARRISON / Ballad Of Sir. Frankie Crisp

All Things Must Pass

All Things Must Pass

早いもので、ジョンが亡くなって22年、そしてジョージが亡くなって1年がたちました。自分でも浅はかなことに、ジョージが亡くなってから「オール・シングス・マスト・パス」の凄さがわかるようになりました。ビートルズ時代を通じて、どこかはかなげな、悪く言えば薄味な曲に、ポール派の私としては今一つ物足りなさを感じていましたし、「オール〜」にしても同じ感想でした。ましてプロデューサーがフィル・スペクターであったことも、当時のジョンの後追いな感じがして、マイナー感がなんとなく聴く気を起こさせなかったものです。

しかし、その弱点があるがゆえに、このアルバムはしばらくすると聴きたくなるときが多くあるのです。心に深く刺さらないが、何かひっかかるものがある。

「オール〜」はファンの方なら、あるいはそうでなくても捨て曲がほとんどない(3枚組なのに)ことに気づいていらっしゃることと思いますが、聴けば聴くほどその良さがくっきりとなってきました。中でもこの「サー・フランキー・クリスプのバラッド」。半音下降するベース、せつないリフレインを刻むピアノをバックに、はかなげなジョージのヴォーカルが郷愁を誘う曲です。私は輸入盤でしか持っていないので、歌詞の意味はわかりませんが、「レット・イット・ロール」というサビの最後のフレーズ(サブタイトルにもなっています)に高揚感を感じてしまいます。

「第三の男」ゆえに生み出した薄味だが心に残る傑作。そこにドラマを感じる点でも大切なアルバムです。